このわた、ウニと並んで日本の三大珍味と数えられているからすみ。実はこれまでからすみを食べたことがありませんでした。
なんと言っても高級ですし、日常的に食べるものでもなさそうですし、扱いも難しそうですし、と勝手に思い込んでいました。そんな私が一度食べて虜になってしまったのが、この「本からすみ 小」です。
からすみとはボラの卵巣を加工した高級珍味で、長崎を代表する特産品です。高級な理由には、非常に手間がかかる製法が挙げられます。
「本からすみ 小」を作っている『小野原本店』によると、からすみを作る工程は、血抜き、塩漬け、塩抜き、天日干しと大きく4つあるそうです。新鮮なボラの卵巣を、臭みをなくすために丁寧に血抜きをした後、ミネラル豊富な天日塩を使って3~6日ほど樽の中で塩漬けにします。塩が卵巣の中まで入ったら、今度は塩抜きをします。それから1ヶ月弱の間、天日干しして仕上げます。これらすべての工程が手作業で行われているというのですから、とてつもなく手間と時間がかかっているわけですね。
からすみは16世紀にシルクロードを経由して中国から伝来したと言われています。国内で作られるようになったのは江戸時代初期からで、野母崎地方でボラがよく捕れたため、長崎県の名産品となったそうです。その味は評判となり、宮中や幕府にも献上されるほどだったとか。ボラは出世魚なので、からすみは縁起物として扱われたという説もあるそうです。
現在、国産のボラは年々減少しており、『小野原本店』で作られているからすみの大半に使われるボラの卵巣もオーストラリア産とのこと。今後は希少価値がもっと高くなるかもしれませんね。
薄くスライスしてそのまま食べても十分美味しいですが、少し火で炙ってから食べると香りが増して酒の肴に最適です。からすみは辛口の日本酒に合うイメージが強いですが、もともとギリシャやエジプトといった地中海沿岸地方が発祥と言われているだけあって、アルコール度数の高いウォッカやジンなどの洋酒にもよく合います。
おつまみ以外でオススメの食べ方は、すりおろしてパスタやリゾットにかけて食べるというもの。塩加減が絶妙でなんともいえず贅沢な味わいになります。
私には少々とっつきにくい食材という印象のからすみでしたが、「本からすみ 小」を食べて、かなりイメージが変わりました。特にからすみパスタは手間もかからず、すっかり虜となっています。
本当は日常的に食べたい! でも高級珍味ですし、特別な日のご褒美的に、家飲みのたまの贅沢にして、ありがたく食べるぐらいが丁度良いのかもしれません。