「あー、この香ばしい胡麻油の香り大好きなんです。これってすごい古い機械ですよね？」。普段はショップ販売スタッフとして活躍中の白石さん。はじめての胡麻油の製造工房にお邪魔したのに、いきなりの質問でその場の空気がぱっと華やぐ。その後も、「食べてみたーい。キレイな色ですね。バニラアイスにかけてみたーい」と『堀内製油』の二代目・三代目を相手に、がっぷり四つ。今なお古式製法で焙煎し抽出する胡麻油の老舗のおふたりも、気がつけば白石さんのペースに。「そうなんです。ピュアな味を感じてほしいので、本当にバニラアイスがけはおすすめ。今、買ってくるので試して！」と俄然嬉しそうな三代目の堀内貴志さん。終始笑顔で熊本の食巡りは始まった。「だって、本当においしいから。なんか地元を自慢できるみたいで嬉しくなっちゃいました！」と白石さん。

熊本県南・八代の町からスタートした、今回の熊本食巡り。続いて白石さんが訪れたのは、『堀内製油』からも歩いていける江戸時代創業の『白玉屋新三郎』。「この老舗の風格は絶対おいしいって、白石アンテナがピンときました！」。早速、お店の中に入ると、満面の笑顔の牛嶋伸夫社長がお出迎え。「今日はね、実際にウチの白玉を体験してもらおうと思ってね。はい、エプロン」。つるつるもちもちの白玉を社長の手ほどきでいきなりの手作り体験！「ポイントさえ分かれば、思っていたよりずっと簡単。これが家で手軽に作れるのは絶対子供が喜びますね」。「そう、おばあちゃんが昔教えてくれた郷土の味とか、季節の行事の意味とか少しでもこうして伝えられたらと思ってね」と牛嶋社長も嬉しそう。

続いて訪れたのは、黄色い絨毯を敷き詰めたように広がる菜の花畑。「春ってやっぱりいいですよね。この景色を見れただけでも幸せだな」と嬉しそうな白石さん。『やつしろ菜の花ファーム』は、この菜の花の種を使ったオイルが評判。「この八代には、すごく手間ひまのかかる昔ながらの製法で菜種油を作ってくれる老舗があって、そこでウチの菜種を搾ってもらっているんですよ」とオーナーの岡初嘉さん。「それってもしかして、堀内さんですか？」「えっ、なんで知ってるの？」。そんな偶然のつながりから話しは尽きず、岡さんが目指す循環型農業についてもお勉強。「やっぱり農家さんて大変ですが、志が高い人がたくさんいますね。私も頑張ろう」と白石さん。しっかり菜種油と女性におすすめという黒酢をおみやげにご購入！

「常に冷凍庫に常備しておいて、朝ごはんにベーグル。これっておしゃれで、できる女って感じですよね？」。次に訪れたのは人気ベーグル専門店『ルコラ』の工場。卵とバターは不使用なのに、九州産の小麦を使いモチモチの食感のベーグルは、冷凍であれば180日保存がきく。「しかも10種類すべて違う味。毎朝、嬉しい悩みが増えちゃいますね」。お持ち帰りと思いきや、こちらは我慢できずに近くの川べりでパクリ。「うーん、おいしい。私はエスプレッソ＆チョコがお気に入りです！」

「さすがにちょっとお腹も満たされてきました～。八代の夜はおいしいお酒で乾杯がいいですね」と、その日の最後に訪れたのはオシャレなダイニングバーの『漱石』。バーカウンターにひとりで座り、スパークリングワインで喉を潤すと、「ちょっと何かつまみたいな」とバーテンダーに相談。運ばれて来たのはなんと缶詰。「実は店が開発したこの缶詰が人気らしく、あの豪華寝台列車のななつ星にも採用されているとバーテンダー。「それは食べなきゃ損ッ！」。こちらは、このしろという魚のアヒージョ缶詰がメニューになっており、それをつまみにクピクピとお酒が進む、進む。結局、初日の八代は食べて飲んでの大活躍。「あー、熊本ってやっぱりいいですね。なんか皆さんから元気をもらえちゃいました」と白石さんも大満足の初日が終了した。

知られざる熊本の美味を探そうと、翌朝訪れたのは、なんと山奥。平家の落人伝説の残る『五家荘』の玄関口でもある八代市泉町であった。銘茶の郷で茶畑を散策し、茶畑を望みながらの休憩では『ラ・シエル』のもろみチーズケーキを。「あっ、これ全然甘くない。スイーツというより、むしろワイン。」平家の落武者が生み出した保存食・豆腐のみそ漬けをヒントに、もろみ豆腐を使ったケーキは、たしかにしっかりとした塩気とチーズに負けない奥深い風味が特徴。「これ、東京のマダムにこそ食べてほしいです。絶対自信あります！」。朝から元気はつらつ。近くの釈迦院で願い事をしたり、カップルや女性に人気の人吉「おかどめ幸福駅」に足を延ばしたりと、観光も楽しみつつ次を目指した。

次に訪れたのは、熊本県の南部、日本三急流のひとつ球磨川と貴重な動植物の宝庫・白髪岳を擁する球磨郡あさぎり町。ここで体の中からキレイになるをコンセプトに、たもぎ茸の栽培とそれにちなんだ商品を開発するのが『くまもとうまかもんショップ（アスリー）』。「聞きなれないたもぎ茸という茸ですが、実はかなり貴重らしいんです。あとですね、難しいことはよく分からないのですが、老化防止の成分や、免疫力を高める成分が非常に多いらしいんです」。β-グルカンという免疫力を高める高分子多糖体が豊富に含まれ、老化防止やメタボリック防止などに効果が期待できるというルゴチオネインという栄養素も豊富。それらを摂取しやすくブレンドティーなどで販売する同社。「やっぱり女性はいろいろ気になりますから」と白石さん。その鞄の中には、しっかりとブレンドティーを忍ばせていた。

「熊本といったらやっぱり焼酎ですよね」。そんなお酒好きでもある白石さんが次に向かったのは、米を原料にした球磨焼酎の老舗『寿福酒造場』。現在は息子の吉松良太さんが一手に醸造を担当しているが、女性杜氏のきぬ子さんの豪快さも健在で、このふたりの笑顔は手間ひまを惜しまない小さな蔵だからこその自信の現れ。「今回はあまり世に出回ることのない初垂れを味わってみてよ」ときぬ子さん。いわゆる最初に蒸留器から出てくる初留（しょりゅう）と呼ばれる稀少で風味豊かな酒だけを集めた一杯は、「すごく華やかな香りですね。こんな焼酎はじめて」と左党の白石さんも驚くほど。少量生産の貴重な一本が、今回マルシェに登場する。

「熊本人は、鍋でも炒め物でも、ごはんにも、柚子胡椒。しかも昔は家々で女性が作っていたんですよ」と優しく笑うのは『旨辛絶品餃子（優光）』のキーマンであるさちよ婆ちゃんこと、赤池幸代さん。このさちよ婆ちゃんが今なお手作りする柚子胡椒を忍ばせた餃子こそ、醤油をつけずに味わえると評判の旨辛絶品餃子だ。「本当にうまみたっぷりでジューシー。あー、でも辛～い」そういいながら箸が止まらない白石さん。さちよ婆ちゃんより直々に柚子胡椒の秘伝を教わり、自宅で作る気満々。「でも冷凍でこの味が届くからな～。うん、まずは味の研究からですかね」とペロッと笑った。

「あー、なんか田舎のおばあちゃん家に来たみたい。嬉しくなっちゃう」。自家農園生産の玄米、黒米、赤米、もち麦に近くの農家さんのもちきびをブレンドした100％熊本産の五穀米で人気を博す『とよはら農園』を訪れた白石さん。まずは味わってみてよと、ご自宅へ招かれてのひとコマが冒頭の台詞。農家の畳敷きの和室で炊きたてのごはんと自家製の漬物。「今日も食べすぎなのに、これは止まらない～」と、五穀米の次には、もち麦ごはんもおかわり。「家族に安心して食べさせられるものを作るって、やっぱり素敵。親子三世代に、ヤギやネコちゃんまで、ここは幸せオーラが全開です。だからおいしいんですよ。あーでも食べ過ぎ！」。

熊本グルメ巡りの最後を飾るのは、親から子へ、そして孫へと受け継がれてきた甘夏農家のおやつ。「子供の頃からずっと食べていたウチのおやつを商品にしたんです」とは代表の濱崎智久さん。柑橘の風味が程よく香るかりんとうに、丁寧に皮を剥く甘夏ジャムやほろ苦い甘夏ピールなど、作業はすべてが手作業。いや、大前提に元々の甘夏などの柑橘からして濱崎さんや近隣の農家さんが丹精込めて作った絶品ばかり。「熊本って、やっぱりすごいところなんです。まじめですし、明るいし。家族や人とのつながりを大切にするし。あの地震からようやく１年。まだまだ大変な苦労もありますが、今回出合った生産者の皆さんは、本当に素敵。そしてどれもが絶品ばかり」。

白石さんはこの旅で生まれ育った熊本が、前よりも、もっと好きになったと語ってくれた。今、熊本は元気です。そして絶品の宝庫です。そんな選りすぐりの熊本の味をぜひご自宅で味わってください！あなたもきっと熊本が好きになります。