本格焼酎と言えば九州全域が名産地。なかでも日本一の出荷量を誇るのが宮崎県です。県内のあちこちに酒蔵があり、米、麦、蕎麦、とうもろこし、栗など取り扱う原料も多彩。代表格である芋焼酎の出荷量においても、鹿児島県を抜いたという報道があるほど。
昭和58年(1983年)に、口当たりがよく親しみやすい減圧蒸留100%の芋焼酎が誕生したのも、宮崎県にある日南市でした。面積の約78%が森林に覆われ、上質な木材である飫肥杉(おびすぎ)が特産品という牧歌的な町です。そんな日南市にある小さな酒蔵『櫻乃峰酒造』から、今回は信楽焼の立派な甕壷に入った銘酒をお取り寄せしました。
「【平蔵】黒麹 亀壺入り 1800ml(芋焼酎)」は、明治10年(1877年)の創業から続く伝統的な甕壷で仕込まれた酒。樹齢80年以上という飫肥杉製の木桶で原料の芋を蒸しあげ、適度に水分を飛ばしているのも美味しさの秘訣です。もちろん地元発祥の減圧蒸留も取り入れています。
ちなみに平成6年、6代目が当主に就任した際に「平成の蔵」にちなみ造ったのが、こちらの「平蔵」という銘柄でした。今回注文したのも、容器の甕壷は熟成を促進させる効果があるとのことだったので、「平成の蔵」の味わいを令和で寝かせつつ、ゆっくり楽しもうと考えました。
少なくとも半年は熟成予定ですが、まずは味見から。木製のフタと和紙のカバーを外すと、ラバータイプのフタに加え、太いゴムバンドで厳重に封がされていました。
鼻孔をくすぐるのは優しい黒麹の香り。芋焼酎特有の荒々しさはなく、むしろ気品さえ感じます。備え付けの無垢材のひしゃくですくうだけで贅沢な気持ちに。
まずはストレートで一口。するりと滑らかな口当たり。アルコール度数が25度にしては非常に軽く淡麗であり、ほどよく刺激的。甘味やコクがふわりと広がる「美しいお酒」という印象です。
ロックでいただくのが蔵元のおすすめですが、知り合いの宮崎県人が言うには、氷がほどよく溶けてアルコール度数が20度前後になったときが最も味わい深くなるそう。
「【平蔵】黒麹 亀壺入り 1800ml(芋焼酎)」は製造年月日からまだ2ヶ月も過ぎておらず、清らかで透き通るような印象。今回は甘辛く炊いた大根や卵と合わせましたが、お刺身などの方が現時点では相性が良さそうに感じました。
熟成させることで風味が深まるのが甕壷入り焼酎の醍醐味。今後はどう変化していくのか…令和元年を過ごす楽しみとして、少しずつ大切に味わっていきたいと思います。