老舗を牽引する若き料理長と異業種からの経営者

下鴨茶寮が創業した安政3年は、タウンゼント・ハリスが下田に着任した年。いわば日本史のなかの話。以来160年の長きに渡り、京料理の発展、普及、革新、世界への発信という局面に立ちあい、牽引し続けてきた名店です。同店が大切にするのは、土地の食材を、その土地に伝わる方法で料理する「土産土法」。ゆえに今日の京野菜の普及に果たした役割も小さくありません。
 しかし、ただ伝統を守り続けるだけの老舗ではありません。新たに取り入れられる創意工夫、斬新な試み。近年は28歳の若き料理人・千田竜司氏を料理長に、脚本家の小山薫堂氏を経営者に迎え、さらなる革新と躍進を続けているのです。「重圧もありますが、楽しみの方が大きい。学んできたことをベースに、さまざまなことにチャレンジしたいです」と決意を見せる千田料理長。時代とともに変わる需要に柔軟に対応しつつ、ただ芯の部分だけは振れずに守り続ける。それこそが下鴨茶寮が日本の食のトップランナーたる所以なのかもしれません。

料理長直伝のアレンジレシピ

届いたら、そのまま味わえる手軽さが魅力のお取り寄せアイテムたちですが、さらにひと手間加えれば、途端におもてなし料理に早変わり。そんなアイデアレシピを、千田料理長自らが教えてくれました。
 まずは「料亭の合鴨ロース」を使った鴨まんじゅう。まずジャガイモを蒸して裏ごしし、少々の塩を振って丸めます。その上に合鴨ロースを乗せて蒸し上げ、仕上げに合鴨の出汁にとろみをつけて添えれば完成。ねっとりとしたジャガイモの饅頭に、濃厚な鴨の旨みが加わり、上質なおいしさに。ミョウガ、芽ネギ、ショウガを添えれば、見栄えもいっそう良くなります。  続いては「料亭の昆布〆」を使う目にも華やかなちらし寿司。酢飯に付属の煎り酒を加え、さっくりと混ぜ合わせます。あとは昆布〆の魚と野菜を刻んで、彩り良く盛り付けるだけ。仕上げにいくら、絹さや、木の芽をトッピングしました。簡単なひと手間で、おもてなしにもぴったりの豪華なちらし寿司の完成です。

伝統の料亭・下鴨茶寮とその主人・小山薫堂氏

数年前に下鴨茶寮のブランディングを担当した縁で、やがて跡継ぎのなかった下鴨茶寮を買い受けることとなった小山薫堂氏。食通としても知られるものの、はじめた当時はあくまでも門外漢でした。しかしその客目線の経営が、プラスの効果を生んだのです。
 小山氏は「もっとも厳しい客、あるいは良質なクレーマー」と笑いますが、事実、小山氏が主人となってから、目に見える形で料理が変わったといいます。その新たな姿は、端的にいえば現代的な料理。それでいて間違いなく下鴨茶寮の料理でもあります。伝統と革新。この絶妙なバランス感覚こそが、小山氏の才覚でした。
 もちろん、160年続く伝統を変えることに葛藤はあったといいます。「きっと、今までの方が良かった、と言われることもあるでしょう。しかし料理はやはり、今愛されるものでなくてはいけない。そこを念頭に置いて考えました」そんな思いを料理長と共有しながら、やがて下鴨茶寮は変わり始めたのです。
 お取り寄せ商品のインターネット販売も、そんな変化のひとつ。「お店自体は多くのお客様を受け入れられないので、ここで作った味をお届けする、量的な価値を作り上げることも重要。いわば口福量の最大化。一人でも多くの方に料亭気分を味わって頂ければ」身近に味わう料亭の味。その裏には、京都を愛する小山薫堂氏の密かな熱意が潜んでいました。