肉の魅力を知り尽くす山形牛の伝道師

横浜の精肉店『加藤牛肉店』の3代目。調理師学校を経て21歳で家業を継ぐものの、直後に先代が倒れ、以降ほぼ独学で肉の扱いを学んできました。餌や肥育方法、産地ごとの特徴、個体差、部位の特徴。連日食肉市場に足を運び、試行錯誤を繰り返しながら、辿り着いたのは山形牛の雌牛という答え。きめ細かい身質、濃厚な旨みと独特な風味。以降は選りすぐった山形牛の魅力を発信し続け、いつしか“山形牛の伝道師”と呼ばれるまでになっていました。

上質な肉のおいしさを伝えるべく、28歳の頃から加工品製造にも着手。肉を知り尽くしたプロが手がけるウインナーやコンビーフは、素材本来の旨みがギュッと凝縮された極上品。その味はたちまち評判を呼び、一部は入手困難な状況になりました。今回のご紹介は、シェフではなく仕掛け人・加藤敦が手がける、貴重でハイクオリティなアイテムの詰め合わせ。従来のイメージを覆すような絶品の数々を、ぜひお試しください。

部位の魅力を引き出す個性豊かな加工品

同じ素材から生まれた加工品であっても、その味わいは驚くほどさまざま。それが肉を知り尽くす職人の技でもあります。たとえばハンバーグなら、6対4の割合で山形牛と山形豚をブレンド。これにより山形牛の濃厚な旨みを、豚の豊かな香りがいっそう引き立てます。あるいは牛タンのウインナーなら、粗くカットすることで牛タンならではの食感を残します。「欲を出していじり過ぎてはダメ。素材が活かすために、基本を大切にすることです」と加工品の秘訣を語る加藤さん。部位ごとの特徴と持ち味。加工品のなかに、その本質を落とし込むのです。

リンゴのチップで燻すことで、強すぎない適度なスモーク香をつけるサラミウインナーや、手でほぐすことで余分な脂を落とすコンビーフも同様。その肉、その部位がもっとも魅力を放つ側面を掘り下げ、力強い旨みを備えた加工品に変えるのです。

旨さの底を支える職人の技と経験

パンやケーキを作るときには時間や分量などを示す明確なレシピがありますが、相手が肉の場合はそうはいきません。なぜなら相手は生き物だから。職人の勘に頼り、個体差に合わせた調理が必要になるのです。たとえばコンビーフは、拳大にカットした肩ロースを塩漬けにして1週間~10日間ほど貯蔵。この浸かり具合を判断するのは、肉の色合いのみだといいます。その後、塩を洗い落としてから今度は釜で6~8時間炊き上げ。この際の火の通り方もまた、職人の勘。最後に熱々の肉を手作業でほぐす工程も、もちろん熟練の技術の賜物です。
粗挽き牛タンのウインナーで腸詰めが破裂しないように空気を抜くのも、燻製で鼻孔から香りが抜けるように仕上げるのも、ハンバーグのなかに肉汁を閉じ込めるのも、すべて経験と勘、そして丁寧な手作業の帰結。生産者や肉そのものへの敬意と、その品質を消費者に届けるという責任感が、極上のおいしさを生み出しているのです。
一生懸命牛を育てた生産者さんが食べても、心から満足できる加工品。それがこれからも変わることのない加藤牛肉店の味なのです。