異業種からの挑戦! 注目ワイナリーが贈る優秀ワイン

「新潟ワインコースト」でもっとも新しいワイナリーとして、2015年10月に誕生した『ルサンクワイナリー』。
“ルサンク”とは、フランス語で数字の「5」。その名の通り、コースト内で5番目にオープンしたワイナリーでもある。リゾート地のコテージのような美しい白亜の建物を入ると出迎えてくれるのが、醸造長の阿部隆史さんだ。以前は東京のIT企業に勤めていたという阿部さん。ワインと、ワインのものづくりとしての魅力に惹かれ、心機一転、自ら醸造に挑戦することにしたのが2013年秋。異業種からの参入だが、勧められるままにワインを試飲すると、初年度のリリースである2015年から、安定した品質のワインを造り出していることがすぐに分かる。
すべてのラベルに「シャルドネ」「メルロー」などと記載があるように、ワインは現在、ほとんどがセパージュと呼ばれる単一品種で造るもの。そのどれもが品種の個性を素直に表した美味しさ。いい意味で分かりやすい、ひねたところがない優れたワインばかりだ。

丁寧で細やか。そんな人物が造るワインもまた、同様の個性が

「シャルドネ」をひと口含めば、心地よい酸味とフルーツのような香り、しっかりとした芯を感じる。「メルロー」を含めば、なめらかで豊かな果実味に包まれる……。 まったく異なる個性のワイナリーが集まる「新潟ワインコースト」にあって、ここ『ルサンクワイナリー』のワインの味わいは、まっすぐに王道を行く正統派と考えてもいいかもしれない。それはそのまま、阿部さんの人柄にも見受けられる。分かりやすい言葉を選びながら丁寧に説明してくれる真面目さ、蔵の備品はすべて定位置に置かれ、ときに汚れないよう布を被せて管理する細やかさ。こうした環境下で扱われるからこそ、ぶどうは本来持っているポテンシャルを、いかんなく発揮できるのだろう。
目指すのは「エレガントでトラディッショナルなワイン」だと阿部さん。“エレガント”という言葉が象徴するのは、ピュアでクリアな味わい。“トラディッショナル”とは、阿部さんがワインを造るとき常に頭の片隅に置いているという、大好きなブルゴーニュワインのベーシックな造り方から生まれる味わいのことだ。

浜を吹く心地よい風。ボトルの中に、そんな光景も込めたい

そしてもうひとつ、阿部さんが意識するのが、新潟・角田浜のテロワールだ。
「このエリアは海に近くて、向こうには山がある。夏の日中は暑いですが、朝晩は涼しい風が抜けていてとても気持ちがいい。いいところだな、好きな場所だなと思います。そういうこの場所らしい特徴や光景も、ワイン造りに込めていきたい」
シンプルで品のあるデザインの美しいエチケットは、よく見るとさらさらとした触り心地の和紙。これも、ここ角田浜の砂地をイメージしたのだという。
阿部さんはちょうど今、ワイナリー創立から3回目の仕込みの真っ最中だ。「だいぶ自分の中の方向性が見えてきた実感があります。テクニックでなんとかしようとせず、あまり手を加えない造り方を心がけていきたいですね」
最後にワイン造りのよさを聞くと「思い通りにいかない面白さ。そして造りながら、自分も楽しめるところでしょうか」と答えてくれた。
「楽しみながら造っていることは、きっとワインの味にも表現されると思うんです」。真面目だけではない、遊び心もちらり。ますます、今後の展開が楽しみになった。