1本1本に愛情を込めて。瀬戸おじさんの手造りワイン

『ジーオセット』という名前を初めて聞く人も多いかもしれない。創業は2013年とまだ若く、生産するワインのほとんどは、地元である新潟県内で消費されているからだ。しかしここ、着実にファンを増やしている今注目のワイナリーのひとつでもあるのだ。
醸造長の瀬戸潔さんは、生まれも育ちも東京都。2010年に26年間勤めた広告代理店を辞めて新潟に移り住み、「新潟ワインコースト」を牽引してきた『カーブドッチ』が主宰するワイナリー経営塾を受講、翌年には法人を設立したという情熱の人だ。
「確かに、代理店の仕事を続けている方が収入はずっと高いです。でも、今はスピード重視の時代でしょう。広告業界も“ものづくり”とは程遠い仕事が増え、違和感を覚えるようになって。ワイン造りにもスピードは必要ですが、やっぱりハンドメイドの面白さがあるのがいいんです」
重機を運転して大量のぶどうやタンクを運んだり、醸したワインを瓶詰したり……そんなすべての工程を、毎日コツコツとこなす。『カンティーナ・ジーオセット』とは、イタリア語で“瀬戸おじさんのワイン蔵”の意味。すべてのワインが、瀬戸さんの愛情をたっぷりと受けて育てられている。

フードフレンドリーなワインは、ぜひ、料理と一緒に楽しみたい

『ジーオセット』のワインの裏に貼られたラベルには「フードサジェスチョン」なる項目が記載される。たとえば、オンワード・マルシェでも扱う人気のロゼワイン「ヴーノ・チェラスオーロ」なら“カプレーゼ、バーニャカウダ、新潟ならかきのもと(食用菊)のおひたしや和え物”といった具合だ。できるだけ料理と相性のいいワインを造りたいという瀬戸さんの考え方を反映させたものだが、この考え方の原点となった体験が、あるレストランで飲んだイタリアワインだったという。
「栓を開けたときは、これ本当にうまいの? という味。でも食事を始めて料理と一緒に味わったら、ガラッと美味しくなった。食事なんて急げば30分で終わるけど、ワインがあれば2時間でも3時間でも楽しめるでしょう。誰かと一緒に食べて飲んで、あの時は楽しかったねといわれるワインを造るのが理想です」
メイン料理に合わせられる、しっかり熟成感のある白。野菜はもちろん、生ハムやサラミといった前菜にぴったりなキレのよいロゼ。聞くだけで唾液腺が刺激されるそんなラインナップの数々は、大切な人々と囲む賑やかな食卓がよく似合う。

イタリアワインのような、地元に根差した造りを目指して

しかし意外なことに、イタリアを訪れたのはごく最近が初めてという瀬戸さん。実はワインと出会う前は大のウイスキーファンで、アイリッシュウイスキーを求めて渡ったアイルランドに魅せられたのだとか。新潟と縁を繋いだのも、荒涼とした日本海に面したこの場所がどこかアイルランドを連想させたこと、そしてお気に入りのサッカーチームがあったことがきっかけだ。しかし「いざ改めてイタリアを訪れてみたら、新潟との共通点がたくさんありました」と瀬戸さん。「環境も風土も、南北に長くて色々な食文化があるところもそう。これはもしかしたら、ワインに導かれたのかもしれないなって(笑)」
イタリアではどんな地方にも土着のぶどう品種があり、その土地に根差した造り方でワインが造られる。瀬戸さんが目指すのもまた、そうした“地元のテーブルワイン”だ。ここ数年は、近隣の小学校の子どもたちにぶどうの収穫を手伝ってもらい、その御礼に、その子たちが20歳になったとき、収穫したぶどうで造ったワインをプレゼントする計画もあるのだそう。
着実に地元の人気ワイナリーとして存在感を高めるこちら。新潟・角田浜に『ジーオセット』あり。そういわれる日も、遠くない。