千葉の老舗酒蔵が長く温めてきた逸品で、古酒の世界を楽しませる

「偶然、品評会用に使った大吟醸の10年物が残っていて、味わうとまったく違う酒質になっていた。驚くほどまろやかで、旨みが強くなっていたんです。それからですね、毎年熟成用に少しずつ酒をストックするようになったのは」
創業は享保8年(1723年)と伝わる老舗酒蔵『岩瀬酒造』は、昭和22年(1947年)には全国酒鑑評会で、主席受賞。千葉県屈指の実力を誇る酒蔵が古酒という新たな可能性に力を入れたのは、なんと今から40年以上も前だというから驚きだ。
当時を語ってくれたのは、現在11代目当主・岩瀬能和さん。
自らが味わった偶然の産物に可能性を感じ、昭和40年代から古酒熟成を始め、今や日本の酒蔵で屈指の古酒のストックを誇る。
今回は20年古酒と30年古酒をオンワードマルシェにて取り扱わせていただくが、その風味豊かな味わい、重層的な旨みの連続は、日本酒が苦手という人にこそ、一度楽しんで欲しい逸品だ。まるでウイスキーにも似た芳醇な香りを放ち、まるでフルーツ酒のような甘美な余韻も併せ持つ。古酒という新たな日本酒の世界がここに。

昔ながらの山廃仕込は、パーカーポイントでも堂々95点を獲得

さらに『岩瀬酒造』では、水は敷地内に湧出する井戸水を用いるのだが、海が近い御宿の水質はミネラル豊富で硬度が高い。酒も自ずと味わいが豊かな分、しっかり旨みをのせるどっしりした味が長く特徴であった。 「味わいが豊富だけど、かつては硬いと言われていた。お燗すると良いとも言われていました。当時は量を飲める酒でなかったんです。それが古酒にすると、まろやかになり、独特の旨みが出る。不思議です。」とは岩瀬さん。
今ではそれらの特徴を活かし、さらに古酒にした時の味わいの変化を計算。蔵で醸す全仕込み量の2/3を山廃仕込と呼ばれる昔ならではの造りに。こうすることで旨味のある濃醇で酸のしっかりしたお酒に注力しているのもポイントだ。
さらに言えば、単純に古酒だけが素晴らしいという評価を得たわけではないのだ。なんとワインにも似た酸のしっかりある「純米大吟醸 岩の井 山廃」は、ワインの世界で絶大なる信頼を誇る格付けのひとつパーカーポイントで95点を獲得。数ある日本酒の銘酒を押さえ、堂々2位の成績をおさめたのだ。

独自路線で突き進む老舗酒蔵の挑戦は、さらなる楽しみを教えてくれる

江戸時代より約400年の歴史を誇る、茅葺屋根の母屋を中心に『岩瀬酒造』の酒蔵はまるで歴史の生き証人のような年代物がずらり。さらに40年以上前より古酒に注目し、古式製法である山廃にこだわり、その歴史とともに長く日本酒を熟成させてきた。
「冷蔵貯蔵してみたり、海の中で熟成させてみたり、いろいろやりましたが、どれもいまいち。やはり蔵の中で四季の温度変化があるほうが熟成は進みます。こればっかりはどういう味になるか想像もつかない。だから面白いんです」と岩瀬さん。
生酒や新酒のように開けたらすぐ飲まなければという日本酒も多い中、古酒という独自の活路で勝負する千葉の酒蔵『岩瀬酒造』。その他とは一線を画す、芳醇かつ甘美、さらには長い余韻を楽しませる美酒は、料理やスイーツとのマリアージュも新たな個性で深い楽しみを教えてくれるという。