170年に亘り愛される老舗茶舗。選りすぐりの玉露を提供してくれた

「今村家は代々茶業一筋に宇治茶の販売をしてきました。そして一子相伝、茶を知り尽くした者が長兵衛を襲名する事になっているんです。私も65才になった平成10年に、六代目長兵衛を襲名する事ができました」。
そんな挨拶からお話を伺ったのは創業嘉永2年、160余年の歴史を誇る「今村芳翠園」の7代目今村真さんだ。
宇治茶と関東のお茶、浅蒸しと深蒸しの違い、さらには宇治でも高級品とされる飯岡の玉露の味わいなど、お茶の話はとめどなく、気がつけば、宇治の茶畑まで案内してくれた。
「お茶の良さを少しでも知っていただきたくて、本当に素晴らしい日本文化なんですよ」。
手入れの行き届いた茶畑で、愛おしそうに茶葉の香りや手触りを確認する。
そんな今村さんが、これはというのが飯岡の玉露。
「日本一の玉露」として業界内では確固たる位置を保ち続ける最高級品を、今回は特別に提供してくれた。

抹茶離れを食い止めるべく生み出したのが、しっかり抹茶を味わえるスイーツ

「でもね、年々お茶の消費量が減っているのも事実なんです」。
170年近い歴史の茶舗として、なにかできればと今村さんが取り組んだのが、抹茶の味を世に広めるためのスイーツだ。
「抹茶離れが少しでもなくなればこんなに嬉しいことはないですからね」と今村さん。
ふわふわとした食感の抹茶スポンジに、甘さ控えめで抹茶の風味を引き出した抹茶クリーム、その中に小豆とお餅を包んだ「かんなびロール」は、ふわふわともちもちが共存する新食感と、抹茶の味わいが特徴のロールケーキだ。
「ぎりぎりまで抹茶らしさを残したんです。これなら甘いのが苦手な男性でもぺろりでしょ」。
抹茶の香りとほのかに苦味を感じさせるこの配分も茶舗だからこその技なのだ。
「ほうじ茶シュークリーム」もまた、お茶を呼ぶ味わい。
お茶と合わせるスイーツもまた、茶舗ならではの仕事が凝縮されているのだ。

温故知新を大切に今なお守る昔ながらの茶舗の設備

最後に今村さんが案内してくれたのが茶舗の地下にある倉庫。
「昔ながらのレンガ造りで、冷房を入れなくともひんやりしているでしょ。これがお茶の葉を劣化させない昔ながらの知恵なんです」。
外は猛暑でとろけそうなほどに熱を帯びているのに、この地下空間は驚くほどに快適。
日本古来の伝統を後世に伝えることこそが、歴史ある茶舗の7代目の使命なのだと今村さんは教えてくれた。最後に淹れたての抹茶を味あわせていただき、「おつかれさんです」とひと言。
そのほっと和む味わいと、人を気遣うやさしさに老舗の矜持をみた。