マイナスを工夫で乗り越え、今なお進化を続ける老舗酒蔵

「高知の人間は逆境に強いんですよ」。
高知を代表する老舗酒蔵「司牡丹酒造」の4代目蔵元である竹村昭彦さんは、巨大な漆喰の白壁が覆う酒蔵を巡りつつ、そう教えてくれた。
「でもね、お酒が大好きで、山海の幸が豊富だから鮮度重視の食文化、困ってしまいますよね。だって、いいお米を育てようという機運がない」。
高知をけなしたかと思えばそうではない、だからこそ最高の酒米とされる山田錦に行き着き、今ではそのほとんどの酒を山田錦で仕込んでいるのだ。
今から約400年前、関ヶ原の合戦直後に端を発する老舗酒造。
長い歴史の中では幾度となく苦境に立たされたという。
酒造りには不向きとされる軟水仕込み然り、戦中戦後の物資が手に入らない時代でも品質至上主義に徹した造り然り。
「マイナスであればあるほど、妥協せず、工夫で乗り切り、その先に進化があったんです」と教えてくれる。
そうなのだ竹村さんの話しを聞いていると、高知を愛してやまないこと、それが蔵人に伝播していることが伝わってくる。
今や人気酒として、左党ファンも多い「船中八策」や「司牡丹」のシリーズも、そうした歴史を紡いだ結晶。
高知を愛した酒、それこそが司牡丹の精神なのだ。

日本一水のきれいな川・仁淀川の伏流水こそが酒造りの根幹に

四国山脈の連峰を源として太平洋に流れる仁淀川は、「日本最後の清流」として有名な四万十川を凌駕する水の透明度を誇り、「日本一水のきれいな川」とも言われる清流。
その湧き水こそが、司牡丹の仕込み水である。
「例えばですが、仁淀川の軟水をどう仕込むか? それまでの酒質に満足せず、私の曽祖父であり司牡丹の育ての親である竹村源十郎は、全国行脚で有名醸造地を巡り、軟水醸造法の広島杜氏に行き着き、口説き落とします」。
軟水と造りの相性をとことん見極め、それを品質向上につなげ、軟水仕込みの酒を格段に進歩させたのである。
それこそが司牡丹に脈々と受け継がれる心。
現在も昔ながらの造りを大切にしつつも、良いと思えば最新技術の取り入れもいとわないという。
いつの時代も変わらぬ飽くなきチャレンジスピリッツ、それこそが老舗酒造の根幹を支えている。

愛すべき高知を詰め込んだ酒、それこそが目指すべき酒造り

「今回、取り扱わせていただく『仁淀ブルー』は、もちろん仁淀川の伏流水を使用して仕込んだ純米酒。
あの惚れ惚れするような川の透明度を酒に落とし込めればと苦心した一本です」。
ほのかに柑橘の香りを忍ばせるその味わいは淡麗辛口にして、艶やかな丸みも持つ。
ひと口味わうとラベルに描かれた清流の風景がふっと浮かんでくるから不思議だ。
自然豊かな土佐れいほく産の山柚子をギュッと搾った柚子の酒『山柚子搾りゆずの酒』も、たっぷりと太陽を浴びて育った柚子の芳香をそのまま詰め込んだような味わい。
「司牡丹の酒とは、まさに愛すべき高知を詰め込んだ酒です。純米大吟醸の『美彩司牡丹』がどんな味かは……。ぜひ、お試しください」そう笑う竹村さん。
蔵元自信の一本はぜひご自身でお試しを。