差別化を目指し、コシヒカリに特化した米作りからの脱却

筑波山の裾野、筑西市の桑山地区は、秋になるとあたり一面が黄金色に埋め尽くされる、県内有数のコシヒカリの産地として知られている。
「大嶋農場」はそんな田園地帯にある米農家ながら、面白いことに主な栽培品種にコシヒカリを置いていない。
かつてはコシヒカリ一筋で栽培する米農家だったが、代表の大嶋康司さんが20年ほど前にその体制を一変させたのだ。
「どれだけこだわって栽培しても、やはり魚沼産がコシヒカリブランドの頂点ということに揺るぎはないんです。米価が下がった時代背景もあり、コシヒカリ一本の栽培に限界を感じたんです」
そこで注目したのが、当時、つくば農業研究センターで開発されたばかりの新品種ミルキー・クイーンだった。
アミロースの含有量が低いため粘り気が強く、もちもちとした食感が楽しめるだけでなく、コシヒカリのように食味がいいお米だ。
大嶋さんはミルキークイーンを主力に据え、より栽培方法にこだわった、付加価値のある米作りへとシフトしていったという。

育苗から収穫まで、有機によるこだわりの栽培が育む「百笑米」

有機による独自の米作りで差別化をはかり、米の美味しさを追求してきた「大嶋農場」。
そんなこだわりの栽培方法で作られる米はミルキークイーンだけでなく、今では華麗舞(カリー米)、コシヒカリなど30品種以上に及んでいる。
それらは「百笑米」ブランドとして販売され、味を知る食通たちから高い評価を得ているのだ。
その理由のひとつが、確かな経験と知識に裏打ちされた米作りへの取り組みだろう。
2001年に有機農産物の認定証を取得するまで、化学肥料などを使わずに3年以上かけて地道に行ってきた土壌改良。
「山、畑、海のものを混ぜるのが一番、田んぼにはいいと信じている」と、自家の養鶏場から取れる鶏糞、落ち葉、籾殻、糖蜜、にがり、牡蠣殻などを混ぜて堆肥をつくりも始めた。
無論、雑草対策には除草剤は不使用。
米ぬかを散布して草の成長を食い止め、稲の生育を守った上で、手作業によって除草する。
化学肥料に頼らない、安心で安全の米作りは、まさに「百笑米」の真骨頂となった。

安心・安全はもちろん、独自の工夫で美味しさにもこだわった

もちろん、それらの有機栽培による米作りも美味しさにこだわった上での話である。
実は「大嶋農場」では、米の食味を向上させるため、水に国産蜂蜜と沖縄産「雪塩」、鰹節エキスを混ぜたものを散布しているというのだ。
意外に思われるかもしれないが、事実、こうするようになってから、米の旨みや甘み、風味が一段と良くなったと大嶋さんは話す。
「蜂蜜は光合成を促進させるといいますし、天然塩にはマグネシウムなどのミネラルがたっぷりで、カツオエキスにはアミノ酸が豊富。これを穂が出る時期に数回にわけて与える。人間も疲れた時は糖分などが栄養が必要でしょ。稲もそれと同じですよ」
昼夜の寒暖差がある気候、鬼怒川水系に恵まれた地下水など、米作りに最適な環境が整う筑波山の麓で作られるこだわりのお米。
そこには米作りに情熱を注ぐ、大嶋さんの思いが詰まっている。