創業は戦国時代。長い歴史のなかで積み重ねられた醸造の技

広島県で最古の法人である『尾道造酢』の創業は1582年、織田信長が本能寺に散った年にまで遡る。
それだけ長期にわたり愛され続けてきた事実。
それだけでも、その品質と味に寄せられた信頼を推し量ることができる。
しかしもちろん、積み重ねられたのは時間だけではない。国内のあらゆる醸造酢のルーツともいわれるオリジナルの酢酸菌は、430年もの間、ただの一日たりとも欠かすことなく撹拌されている。
「一日でも怠ったら、自重で沈んだ酢酸菌が窒息してしまうんです」と工場長・丸尾仁人さん。
地道な作業が、気の遠くなるような期間、繰り返されてきたのだろう。
そんな年月のなかで研ぎ澄まされてきた技術が、力強い酸味がありながらも角がない酢をつくりあげるのである。
さらに蓄積したノウハウを基に、新たな商品開発も日夜続けられる。
時の階段を登るかのように一歩ずつ、老舗の味は今日も進化し続けているのだ。

確かな品質に寄せられる多方面からの信頼と支持

柱や梁は創業当時のものという歴史的建造物さながらの醸造所。
その一角には長い雨樋のような施設がある。
これが『尾道造酢』が製造特許を取得する酢酸発酵のライン。
この手法によりクオリティはそのままに、安定した量の酢を定期的に供給することが可能になるのだ。
このような伝統と革新の両者を武器に、昭和29年からは西洋酢の製造にも着手。
キューピーマヨネーズ、ドレッシングの原料酢として採用されるなど、企業からも多大な信頼を寄せられている。
もちろん、味を知る料理人たちもこの名品を放っておくわけがない。
名門ホテル料理長から老舗寿司屋まで、錚々たる名人たちがここの酢に惚れ込み、長きに渡り使用し続けている。

果実酢、ポン酢、飲用酢など新たな商品も次々に誕生

瀬戸内の温暖な気候と伝統に育まれながら、尾道の酢は発展を遂げてきた。
その進化は21世紀になっても止まることはない。
かつては各家庭で配合するものだった合わせ酢を商品化した「そのまんま酢の物」は、酢の物を手軽に仕立てられる新感覚の酢として大ヒット。
老舗の伝統に近年の嗜好を反映して生まれた果実酢や飲用酢も、多くの支持を集めている。
もちろん、昔ながらの製法を守る天然醸造酢も変わらずに守り続ける。
毎日の食生活と切り離せない酢。
馴染み深いものだからこそ、本物ならではの深いおいしさがより身にしみる。