比肩するところのない恵まれた環境だから育まれる極上昆布

「親潮と黒潮が混ざり合う、北海道で唯一の海が尾札部なんです」。
美しい北海道駒ヶ岳の手前に広がる海を眺めながら、能戸圭恵さんは言う。
昆布村の名で自社の通販サイトも運営する、能戸フーズの代表だ。北海道には温かい黒潮で育つ利尻、冷たい親潮が育む羅臼など、様々な種類の昆布があるが、函館市の東北東に位置する南茅部地区・尾札部町の特産品は真昆布。
古来より味は深く、甘みがあって清澄な出汁が取れる上物として将軍家や皇室に献上されてきた。
この町で近年になって注目を集める、もうひとつの昆布が『がごめ昆布』だ。
「潮の合流だけでなく、広葉樹の多いこの辺りの山はミネラルも豊富で、それらが川を通じて海に注がれていますし、海底の岩盤自体にも栄養成分が多く含まれると聞いています。内海で穏やかというのも昆布の生育に適している。条件に恵まれた土地なんです」。
自身が暮らす町の魅力を語る能戸さんの横顔が輝いて映った。

質の良いフコイダンが豊富な、がごめ昆布はスーパーフード

がごめ昆布が注目を集めるようになったのは、栄養価の高さから。
水溶性の食物繊維で免疫力の向上や美肌にも効果があるとされるフコイダンは一般的な出汁昆布の数倍も含まれており、さらに、ミネラルや鉄分、カルシウムなども豊富。
何より、食べて美味しく、函館近海でしか採取できないため、今や希少価値も高まっているのだ。
「がごめ昆布はいわば日本のスーパーフードです」。
『天然がごめ昆布 しょうゆ』は、がごめ昆布の魅力にいち早く気付き、それを広めようと15年ほど前、当時、水産加工会社を営んでいた能戸さんのお義父さまが考案した能戸フーズの看板製品。
醤油は北海道産丸大豆と小麦で醸し、尾札部町を中心とする南茅部地区の天然がごめ昆布100%で作っている。一般的な醤油よりも塩分を抑え、昆布の旨みがしっかり感じられる、まろやかな醤油に仕立てているのも大きな特徴で、刺身との相性は抜群。
もちろん料理に使っても美味しく仕上がり、「一度、味わってしまったら、もう普通の醤油に戻れないとおっしゃるリピーターの方が多いんです」と能戸さんも笑顔で語るのだ。

製品を通じて世に広めたいと願う、尊敬と感謝、そして、愛情

「父と夫は今、魚介を買い付ける会社を新たに興しています。私が昆布の加工品販売を主とする、この会社を始めたのは3年ほど前。『天然がごめ昆布 しょうゆ』は私自身も大好きで、やっぱり、この商品をなくしたくないと思ったからなんです」。
能戸フーズは今日、『とろろ』や『きざみ』など、天然のがごめ昆布を使って様々な製品を展開している。
そして、その製品づくりに関わるスタッフは皆、女性。
「義父が加工会社を営んでいた頃からのお付き合い」で、夫とともに現役の昆布漁師でもある杉村ゆみ子さんを筆頭に、全員が我が子をこの町で育ててきたお母さんたちでもある。
そして、能戸さん自身、4人の娘さんがいるお母さん。
「田舎ですけど、そこにちゃんと仕事があって、子育てしながら穏やかに生活することができる。そんな暮らしのお手伝いがしたくて始めた会社です。もちろん朝は早く、地味で苦労も多い漁師さんの仕事も、私たちの製品を通じて尊敬に値するものだと思っていただけたら嬉しいですね。本当に体に良いんですよ、昆布って。ウチの子たちも『美味しい』っておやつ代わりに食べています(笑)。顎の鍛錬にもなりますし、ヨードは成長期の脳にも良いって言います」。
能戸フーズの製品には妻であり、嫁であり、そして、母である能戸さんの愛がギュッと詰まっている。