添加物不使用は当然。求めるのは素材をいかにいかすか

「よく『食の安心・安全』といいますが、外から見たらそれはこだわりに見えるでしょう。ですが、私たち作り手の立場からすれば、それは当たり前のことだと思うんです」
「清里ジャム」の代表・佐野間芳樹さんはそう平然という。
が、しかし、保存料やペクチン、香料といった添加物を一切加えないことが、ジャム作りにおいてどういうことか。
それは容易いことではない。
例えば、イチゴを100kg使ったとする。
凝固剤を使えば、イチゴに水や砂糖を加えるためジャムはその倍の200kgを作ることも可能だろう。
しかし、無添加で作ればイチゴを丹念に煮詰めていくため水分は蒸発し50kgしか作れず、生産性が悪い。
さらに、ペクチンの代わりにレモン果汁を加える手法もあるが、「清里ジャム」ではそれすら使わない。
理由は簡単。レモンを加えれば、ジャムの主原料となる果物などの風味を邪魔してしまうからだ。

自家栽培のフォレストベリーや周辺地域の地場産果物をジャムに

ペクチンはおろか、レモンさえ使わない。
そんな難題を自らに突きつけるのは、それだけ素材に対するこだわりがあるからでもある。
自社ファームで栽培するレッドカレントやグズベリーといったフォレストベリーのジャムを例にしてみよう。
別に自家栽培自体が珍しいわけではないが、これらフォレストベリーをジャムにするとなれば、自ら進んで作りたがる人はいない。
というのも、このグズベリーなどは60kg分を炊くのに、枝から実を外すなど、下処理だけでゆうに3日間はかかるのだ。
それでも、手間をかけてフォレストベリーでジャムを仕込むのは、佐野間さんの根底にファーマーとしての心があるから。
今からおよそ30年前に佐野間さんは、東京から清里へ越してきた。
ペンションを開業し、宿泊客用の朝食で出すために作り始めたのがブルーベリーだった。
“ジャム屋”となった今もそれは同様なのだ。
自社栽培できない果物は必ず軽トラを飛ばし、自ら生産者のもとへ仕入れに行くことからも、その思いは窺い知れる。

素材に負担をかけぬよう、低温、短時間で炊き上げる独自製法

そうして仕入れた果物をどうするか。
少数精鋭の従業員とともに、包丁で傷を取り除き、それぞれのジャム作りにあった大きさにカット。
そして、北海道産のビートグラニュー糖を加え果物を炊いていくのだが、素材の持ち味を引き出すためのこだわりが、実はここにもある。
「清里ジャム」では、この工程であえて機械を取り入れ、およそ85℃という低温、約45分という短時間で果物を炊いていくのだ。
「これは中の気圧を下げながら熱を加えられる装置。気圧が下がるいうことは、沸点が低い。つまり、素材にかかる負担も少ないから、風味や香りも損なわれないんです」と佐野間さん。
さらに付け加えるなら、それだけ果物の自然な色合いが残りやすいということでもある。
「ほら、うちのジャムは色が鮮やかでしょ?」と笑う佐野間さん。
その豊かな味わいと香り、鮮やかな色合は、清里の原風景のようにビビッドだ。