柑橘の島と言われる瀬戸内海の西のはずれで、とれたての果実をジャムに

広島市内から瀬戸内海の西のはずれに車を走らせる。
のどかな田園風景や緑豊かな山々を走り抜け、伊予(愛媛県)と周防(山口県東部)の間に浮かぶ美しい周防大島へ。
柑橘の島と呼ばれるこの島で、お寺の住職がジャムを作っているというのだ。
「いや、正確には私の妻である松嶋智昭(ちあき)が、実家である荘厳寺の副住職をしているんです」とご主人であり、『瀬戸内ジャムズガーデン』を主催する松嶋匡史さん。
新婚旅行のパリで出会ったコンフィチュールに感銘を受け、今までにないジャムを作りたいと思ったのが2001年。
それから紆余曲折を経て、15年が経った現在、松嶋さんは勤めていた名古屋市の電力会社を辞め、この柑橘類の宝庫である周防大島に移り住み、オリジナルのジャムを製造・販売している。
「多種多様な果実が作られているこの島で、農家さんと協力しながら採れたての旬の味を詰め込めればと思っています。農家さんには、お寺の檀家さんも多く、妻を含めお寺のご縁のおかげです」と笑う松嶋さん。
最初は10軒ほどだった協力農家も今では50軒ほどに、それは松嶋さんの努力があってこそ。
毎日が新鮮と笑いながら、季節季節でこの島だからこそ出会えるジャムを日々生み出している。

農家さんのアイデアを大切に、果実の旬を捉えた味わいで勝負

松嶋さんは言う「ジャム作りは農家さんとの共同作業だと思うんです」。
周防大島の温暖な気候を生かして作られる柑橘類の生産量はなんと山口県第1位。
量だけではない、夏みかんに、いよかん、すだち、はっさく、瀬戸内柑橘と、その品質のよさも折り紙つき。
そんな季節の果実を最高の状態で、いつどのようなジャムにすべきかは長年の農家の経験が物を言うそう。
「果実は生で食べる旬と加工しておいしい旬は必ずしも一致しませんからね」。
そうなのだ、例えば、かぼす。収穫は9月が一般的なのだが、これをジャムにするとまだ青臭さが残り酸味が強すぎる。
「すると生産農家さんからアドバイスがあったんです。収穫を3ヶ月ほど遅らせて、樹上完熟させてみようと。すると酸味もまろやかで完熟のかぼすの味わいが引き立ったんです」。
そうなのだ、高齢化と過疎化に悩むこの島で奮闘する松嶋さんを、島の皆が応援してくれている。
今では完熟かぼすは12月の定番アイテムに。

訪れるたびに新たな味に出会える。常時30種類を揃える贅沢ジャム

「瀬戸内ジャムズガーデン」には年間通して販売しているジャムはひとつもない。
「目指しているのは工業製品ではないですから。この島の自然の恩恵を、手作りでしか表現できない味で伝えたいんです」。
そうなのだ、ジャムズガーデンのジャムやマーマレードには、通常のジャムではよく使用されるph調整剤やゲル化剤、着色料、保存料の類は一切入っていない。
さらには農薬を使っていない種子島のサトウキビから、化学的漂白をしない洗双糖を厳選し、それらをジャムの最低基準である40度に抑え使用している。だから味わえば分かるのだ。
この甘さの根源は旬の果実の甘さなのだと。
春のすだいだいやイチゴに始まり、夏はすももにブルーベリー、秋はブドウやさつまいも、冬の完熟かぼすまで、常時30種類以上のジャムが並び、そのどれもが季節の味。
だから訪れるたび、いつでも新鮮な味に出会えるのが、周防大島でのこだわりのジャム作りなのだ。