島焼酎発祥の八丈島における最も新しく、大きな焼酎蔵

昨今、注目を集める島焼酎をご存知だろうか?
島焼酎とは伊豆七島で作られる焼酎の総称で、そのルーツを辿れば150年ほど前、八丈島に流罪となった鹿児島の商人が焼酎の蒸留技術を持ち込み、それが各島に伝わったことが始まりといわれている。
その島焼酎の発祥地となった八丈島だが、現在、島内には5つの焼酎蔵が存在しており、その中で最も新しい蔵がここ「八丈興発」だ。
年間900石、およそ9万本の焼酎をつくる島内最大規模の蔵ながら、鹿児島や宮崎の焼酎蔵と比べれば、ごく小さな蔵に過ぎず、従業員はわずかに6名。
製菊に三角棚という装置を使っているため“手作り焼酎”を名乗ることはできないが、麹作りから仕込み、手作業によるラベル貼りまで、製造工程のすべてが職人の目の届く範疇で行う、こだわりの焼酎蔵なのである。

かつての島の酒造りに由来する、珍しい麦麹を使った島焼酎

「八丈興発」の代表銘柄に情け嶋という焼酎がある。その特徴といえば、主原料、麹のいずれにも麦が使われている点だ。
焼酎業界においては、その99%が米麹を使って作られるが、焼酎が伝わる以前の八丈島では、米が取れない環境がゆえ麦を発酵させたどぶろくが飲まれていたこともあって、焼酎にも麦麹が使われるようになったといわれている。
そのため、蒸かした麦に麹菌を振り、三角棚という装置で製菊後、その麦麹と蒸かした麦と水を合わせ、醪を作っていくのだ。
情け嶋は、そうしてできた醪を減圧蒸留にかけ、濾過していくことで、さっぱりと飲みやすく仕上げた焼酎である。
また、3つのタンクに焼酎を貯蔵し、消費した分に新酒を継ぎ足していく“仕継ぎ”を採用していることも「八丈興発」ならでは。
泡盛の古酒で有名な貯蔵法だが、こうすることで製造年度による味のばらつきに差が出ぬようにしているのだ。

目指すは焼酎版アイラ、島と海のテロワールを焼酎に

そんなこだわりの焼酎だが、二代目の小宮山善友さんは「島の日常酒。父が作ってきた味を大切にしたいだけです」と謙遜する。
その一方で、「蒸留で味をつけ、濾過で味を脱いていくのが焼酎。日本酒ではいわゆる“造り”が大切にされますが、自分は蒸留を追求していきたい」と自らを“蒸留屋”と自負する面も垣間見せる。
さらに、同じ蒸留酒であり、海沿いの蒸留所という観点から、シングルモルトの聖地、アイラ島になぞらえ、「焼酎版アイラのように、ゆくゆくは島の個性が出るような焼酎も作っていきたい」とも。
そんな小宮山さんの想いが詰まった焼酎を手に入れるなら、「おかげさま」をぜひ試してほしい。
情け島がベースとなった焼酎ながら、こちらはシェリー樽で3年間寝かせたもの。
穏やかな熟成味とほのかに漂う樽香をまったりと楽しめる逸品である。