インスピレーションが形になる灼熱の工房にて

工房に設置された窯の温度は1200℃。
一度火を落とすと再加熱に時間がかかり、インスピレーションが湧いたときにすぐ創作に取り掛かれない。
だから窯には年中無休で火が入れられている。
当然、工房内は灼熱だ。
夏なら50℃近くになることもあるだろう。
しかし汗だくになりながらも、作家・齋藤裕史さんの顔には弾ける笑顔が浮かんでいた。
「いまはガラス作りが、とにかく楽しい」という少年のような姿に、見ている方まで明るい気分になるようだ。
「ポジティブな気持ちで作られると、きっと作品にその思いが伝わる」
だからこそ『ガラス工房◯』の器は、毎日の生活のなかに潤いと、少しウキウキするような明るい気持ちをもたらしてくれるのだろう。

妻がデザイン、夫が成形。二人三脚でひとつの作品を仕上げる

作品はすべて裕史さんと奥様の由香理さんの合作。
ガラス工芸学校で出会った二人だが、吹きガラスを得意とする裕史さんに対し、由香理さんは型取りから仕上げるガラス鋳造がメイン。
専門とする分野は少し異なっている。
だからひとつの作品が生まれるまでに、何度も話し合い、互いの意見をぶつけることが繰り返される。
しかしこのように違う視点をすり合わせながら作られることで、この工房の作品に独特の深みが生まれているのだ。
「使ってくださる人のことを想像しながら作ります」と色やデザインを考える由香理さん、「作るときは無心。そこに妻が魂を込めてくれますから」と信頼を寄せる裕史さん。
息のあった二人三脚。
一昨年には可愛い双子の兄弟も生まれ、工房のハッピー度はますますアップ。
ガラス食器という生活用品に、こんな素敵な愛情とストーリーが潜んでいるなんて。

多色使いのオンリーワンが工房の個性

同じガラスでも得意分野が異なる裕史さんと由香理さん。
しかし揺るがない共通意識がある。
「色をたくさん使いますね。従来のガラスのイメージとは違うかもしれませんが」(裕史さん)、「目指しているのはカラフルで、どこかワクワクするようなもの」(由香理さん)これが『ガラス工房◯』の個性ともいえる多色使いのガラス器。
ガラス特有の透明感よりも、多彩な色使いを前面に出す。
まるで陶器のようにも見える温かみ。
凛としたガラスの質感と、色とデザインによる柔らかい風情が、ひとつの器のなかで見事に調和しているのだ。
雨空に広げた鮮やかな傘、道端に咲く色とりどりの花、幾重にも色彩を重ねた織物。
日常を切り取ったようなさまざまなモチーフで、独自のガラスを作り上げる。
その特別な存在感が、毎日の生活に優しいアクセントを加えてくれる。