大分の食文化には欠かせないカボスを使い、多彩な加工品に

大分県の特産物といえば乾シイタケが有名だが、カボスの生産でも名高い。
事実、大分県は全国のカボスの収穫量の95%以上を占めており、果実を味噌汁や焼酎に絞ったり、焼き魚や刺身の薬味に使うなど、大分県民の食生活には欠かせない食材のひとつとして親しまれている。
ここ「あねさん工房」のある豊後大野市の緒方町冬原地区は、そんなカボスを農業に取り入れた発祥の地として知られているのをご存じだろうか。
周辺には至る所にカボス畑が広がり、自社果樹園をはじめ委託果樹園でもカボスを栽培。
「あねさん工房」では夏に収穫したものを「緑かぼす」、皮が黄色くなり冬に収穫したものを「完熟かぼす」として、カボスを使ったさまざまな加工品を手がけている。
その代表格のひとつが、「やまのまりも」。
いわゆるカボスの甘露煮である。

摘果カボスをどうにか商品に。マリモのごときカボスの甘露煮

「人間と一緒で作物っていうのは、手をかけてやらにゃーならん」
そう言って、まだ小さなカボスの果実をハサミで切り落とす。
一見、もったいないようにも思えるが、摘果作業は果物の栽培ではよりよい果実を実らせるために必ずつきものだ。
「あねさん工房」の「やまのまりも」もそうした摘果したカボスを「どうにかいかせないものか」として誕生した商品。
その生みの親ともいえるのが、代表取締役専務の小代さんである。
小代さんは豊後竹田の出身だが、仕事柄、東京生活が長らく続き、田舎暮らしを始めるために大分へと戻り、この地でグリーンツーリズムをはじめた。
そのもてなしの品として振る舞い始めたのがこの「やまのまりも」。
それが大分県の県知事賞を受賞すると、国の天然記念物に指定される阿寒湖のマリモのごとし、愛らしい見た目で知名度は一躍県外へも広がるように。
今では「あねさん工房」の主力商品のひとつへと成長した。

6日間繰り返される丹念な灰汁抜きが、えぐみのない上品な味を生む

「やまのまりも」はいわゆるカボスの甘露煮ではあるが、実は瓶詰めされるまでは1週間以上の日数を要する実に手のかかる商品。
その行程だが、摘果されたカボスを皮のまま20分ほど炊いて、水で流しながらじっくり灰汁を抜いていく。
これを6日間繰り返し、7日目にしてようやく味入れの作業に入ることができる。
しっかりと灰汁を抜いたカボスに砂糖とグラニュー糖、さらに腐敗の防止のために精製した唐辛子を少々加えて甘露煮に。
火を入れても、取れたての鮮やかなグリーンを保っているのは、銅鍋を使っているためだ。
そうすることで、美しいカボスの形色を保ったまま、まるで和菓子の如き食感のカボスの甘露煮が出来上がるのである。
美しく清涼感のある見た目、食べれば僅かな果実感を残した滑らかな舌触り、まさに豊後大野の里山から贈り物ともいうべき逸品といっていい。