「まずは実際に油の違いを味わって欲しいので、姉妹店の『綾綺殿』で食事にしませんか?」。
油問屋一筋に歴史を重ね200年以上、京都の油専門店「山中油店」の暖簾を守る浅原貴美子さんは、穏やかにそう誘ってくれた。
築100年という町家を利用したカフェ『綾綺殿』の素晴らしさもさることながら、そこで味わったとんかつのなんと軽やかなこと。
聞けば、「山中油店」で扱うおすすめの油をこの店では日替わりで扱い、その違いを知ってもらう店だというのだ。
この日は圧搾のなたね油を使用。淡白な風味で食材の個性をしっかりと伝えてくれる万能なたね油は、その軽やかな揚がり加減で質の良さがひしひしと伝わってくる。
「油の専門店とは、要はこういうこと。実際に自分たちがいいと思った油を、皆様に感じてもらうのが仕事なのです。さぁ、お店へ戻りましょう」。
浅原さんの足取りも軽やか、これぞ京都の老舗・山中油店の油を売るという仕事なのだ。
店に戻り、浅原さんが教えてくれたのは、油のおもしろさと奥深さ。
「なたね油や胡麻油、落花生油など、日本伝統の油の良さを伝えていくことはもちろん大切ですが、現在はオリーブオイルもコーンオイルも扱います。すべては出合いからですね」。 例えば、今回紹介する「GROVE45」というオリーブオイル。
その印象的なシルバーボトルもさることながら、浅原さんは曰く現地・カリフォルニアで出会ったふたりのおばあちゃんがとってもキュートで素晴らしいことから取り扱いを始めたというのだ。
「おしゃれでね、かわいくてね、それでいてオリーブオイル作りには妥協なし」。
そんな話を聞くうちに、このふたりのおばあちゃんがどんなオリーブオイルを作るのか試してみたくなるから不思議だ。
「絶対、おすすめです。パワーをもらえますよ」。
京都で200年紡がれ続けた油店、その根幹を支えるのは、いつの時代も人と人のつながりだという。
イタリアやカリフォルニアから取り寄せる希少なオリーブオイルもあれば、全国各地の伝統製法で作られる日本の油、さらには「山中油店」では今なお自然塗装に使う油なども扱う。
「すべては生産者とお客様の架け橋になれば」と浅原さん。
古来より、油はいつの世にも必要なものとして生活を支えてきた。
だからこそ今では数少ない油の専門店として、おいしさ、おもしろさ、奥深さを伝えていきたいというのだ。
200年以上の歴史を紡ぐ油専門店が、今おすすめする油とは……。
油のプロが間違いないと推す、自信の油を食卓に。
それだけで、いつもの食卓は軽やかに華やぐに違いない。