より美味しく、より安全に。新たな米の価値観を創造

「米穀店の殻をやぶろう」。新函館北斗駅にも使われる道南杉でリニューアルを果たした真新しい店内に、そんなキャッチフレーズが掲げられている。
北海道北斗市。この町で代々、米を扱ってきた澤田米穀店の4代目、澤田導俊さんは言う。
「お米を生産する農家さんの営みを消費者にきちんと伝える。それが小売の仕事」。
“日本一田んぼに足を運ぶ米屋”を志す、澤田さんが今、積極的に取り組んでいるのが特別栽培米の生産だ。
特別栽培米とは、農薬や化学肥料の使用量に関し、同じ地域、同じ時季で比較して一般の半分以下に抑えて栽培される米のこと。
こうした「収量ではなく、品質でお米を評価してもらおう」とする澤田さんの考えに賛同した北斗市の複数の農家を中心に、東北や北陸で同様の試みに挑む生産者も巻き込んで、2015年より、販売を開始している。
『北海道特別栽培米セット』はそうした米の食べ比べができる逸品。
ただ販売するだけでなく、一歩踏み込んで、農家と強固な信頼関係を築きたい。
この製品は米穀店と生産者がタッグを組んで生み出した、成果そのものなのだ。

道内水田発祥の地にある米穀店として地元の魅力を発信

澤田さんが家業を継ぐべく、地元に戻ったのは9年前のこと。
「最初は誰も相手にしてくれませんでした」。
そう言って笑うが、心の中には強い信念があった。
それは、「この町だからこそ、できることがある」。北斗市は、実は道内で初めて水田に取り組んだ、道内水田発祥の地。
代を重ねて米を作る農家も多く、昨今では『ゆめぴりか』や『ふっくりんこ』といった北海道を代表するブランド米も多く生産されている。知られざる米の名産地なのだ。
そんな地元の魅力を、多くの人に伝えたくて、澤田さんは生産の現場に何度も足を運び、田植えなどの農作業を手伝うことから始めた。
「お米ってどうやってできるのだろうという純粋な興味だけですよ」と、また謙遜するが、その過程で生産者も、澤田さんの情熱を感じたからこそ、今があるのだろう。香りが飛ばないよう、手間も時間もかかる二段乾燥を依頼して玄米のまま、農家から直接仕入れる米は、一定の湿度も維持する低温倉庫で大切に保管。
1キロから販売し、店頭でその都度、精米するのも「お米は生鮮品」と考えているから。
澤田さんは、着実に信念を具現化しているのだ。店頭に置かれたプランターに稲が植えられていることに気付き、尋ねると「ウチの前を歩く子供たちにお米が成長する様子を見て欲しかったんです」とスッと微笑んだ。

黄金に輝く、特別栽培米の田は米穀店と生産者の理想郷

「北斗市清川地区の田んぼは水が良いんだ、上磯ダムからの清流が水源だから。赤土で水ハケもいい。そうだな、これから10日以上かなぁ、収穫まで」。
特別栽培米の田んぼを前に、木村正美さんが目を細めながら言う。
小学生の頃から稲作を手伝い、キャリアは50年以上という大ベテランだ。
特別栽培米の稲は通常より間隔を広く取って植えるのが特徴。
「そうすると各々に栄養となる窒素がたくさん行き渡るでしょ?」。
稲の背は低いが、根はしっかり張っているのも特別栽培米だからこそ。
「肥料が少ないからそうなる。いや、ホントに使ってないよ。苗を強くするための肥料を、ほんの少しだけ使うぐらい」。
2面で45haの広さだが、それで「45俵ぐらい」という『ふっくりんこ』の田んぼが黄金色に輝いている。
「木村さんのように全面的に賛同下さる農家さんがいらっしゃるから、私も、自信を持ってお客様に販売することができる。本当に感謝です」と澤田さんも嬉しそう。
「エンドユーザーの顔が見えれば、生産者も、やりがいをもってお米が作れる」という理想の一端が、今、目の前に広がっている。