独自路線を追求した“飲める味醂”で、新機軸を打ち出す

「日本一の調味料屋を目指しているんです」。江戸時代より良質な素材と昔ながらの手造りにこだわってきた岐阜県の造り酒屋『白扇酒造』の5代目・加藤祐基さんは、まっすぐな眼差しでそう笑う。「今、日本酒はある種ブームを迎えていると思うんですが、皆が同じ方向を向いているようにも感じます。ですから流行りにのるだけではなく、蔵の個性を大切にしていきたいんです。江戸時代に味醂屋として始まった蔵なので、そこを大切にした酒造りが目標なんです」。受け継がれてきた製法や伝統など、江戸時代から変わらない当たり前を貫く中で、先を見据える。それこそが加藤さんの考える酒造り。日本一の調味料屋という考えもまた、味醂を極めた先に、自身の目指す酒があると確信しているからこそ。

守り続けるこだわりと伝統こそが、新たな時代を切り開く

味醂の主な原料は、もち米、米麹、本格焼酎。蒸したもち米に米麹と本格焼酎を混ぜあわせ、米麹がもち米をゆっくりと時間をかけて糖化させることで、甘く香り豊かな味醂はできあがる。それは今も昔も変わらない。「非常にシンプルな造りですから、すべてにおいて真摯に」と加藤さん。原料の焼酎づくりからはじまる白扇酒造の味醂造り、もち米は契約栽培された地元飛騨古川産の「たかやまもち」にこだわり、飛騨川の豊かな水で育み、さらに3年という時間をかけて熟成していく。すると甘いのにすっきりとしたどこまでも深味のある琥珀色の本みりんができあがる。「焼酎造りからやる蔵も少ないですし、3年熟成させるのも普通じゃない。だからこそ、他にない味が生まれます」。こちらの本味醂が、多くの料理人に支持されていることをみれば、その質の高さは一目瞭然だ。

飲める味醂のこだわりは、料理酒や焼酎にも伝播しオンリーワンを目指す

3年熟成の本味醂「福来純本みりん」を軸に、多彩な日本酒や料理酒、焼酎など、さまざまなお酒を生み出しているのも「白扇酒造」の強みのひとつ。「うちの本味醂は飲めるが基本ですので、それに使用する焼酎も飲めますし、考えを同じにする料理酒も飲めるが基本」。地元岐阜県産の好適米「ひだほまれ」を主原料に、手作業で丁寧に育てた米麹を使い、蔵元伝承の製法「もち米四段仕込み」で仕込まれる料理酒は、料理に旨味とコクを加えるのはもちろん、飲んでもおいしく味わえるほど、澄んだ味わいで評判に。もちろん、それらの技術の粋を集めた日本酒も、飛騨川の澄んだ流れ同様にキレイな味わいで多くの左党を魅了している。