全国に先駆けて有機栽培や無農薬に取り組んだ置賜地方の青年集団。

「25か26歳だったかな。自分が体を壊して、農業を辞めるか迷ったのがきっかけ」。
一面に広がる田圃を見ながら、ぽつりぽつりとつぶやくのは、『おきたま農興舎』の代表を務める小林亮さん。
それは今から30年近く前の話である。
そんな自身の体験を機に、農業のあり方を見つめ直し、いち早く有機栽培や無農薬米に着手したのである。
「自分たちが食べたいものを作り、それを自分でも食べる。それが基本」。
納得したものを消費者へ。
そんな強い想いからはじまった同社は、山形県南部の3市5町からなる置賜地方の青年部や農協の青年部でつながった11人の農家から始まった。
田圃の中ではまだまだ小さなマガモが元気に泳ぎ回っている。
この本来の自然の循環で生み出される米や野菜は、命を育む食として、今、大きな注目を浴びている。

安心・安全だけでなく、常に“おいしい”を追い求め、味にこだわってきた

全国に先駆けて有機栽培に取り組んできた『おきたま農興舎』の作物は、おいしさと安全にこだわるのが基本。
そう、安心・安全だけではなく、きちんと味を追求しているのだ。
その好例が、小林さんの作るつや姫だ。
元来、たんぱく質の含有量の多い米は、炊飯時の吸水を阻害し、硬くて、粘りの少ないものとなり、食味は低下するといわれている。
食味を向上させるためには、たんぱく質の含有率を低く抑えることが大切。
全国的に人気を誇る山形県産つや姫は、このタンパク質の含有率に6.4%以下という厳しい基準を持っているのだが、小林さんらのつや姫は、そのさらに上の基準を設け、タンパク質の含有率が5.5%未満のものだけを出荷する。
自分たちが食べたいお米を追求した小林さんらの夢は、現在「たかはた産つや姫」として、全国最高基準で、味わい深い食味を食卓へ届けてくれるのだ。

理想を追求した農業。現在、ようやく時代が追いついてきた

「稲は赤ん坊と同じよ」。
田圃で小林さんが話してくれた印象的な台詞だ。
早く気づいてやれれば弱っても立ち直るし、世話をかけすぎてもダメなのだそうだ。
自然の流れに任せつつ、その都度その都度、必要な手を加えてやることこそが、健康な稲を作るということなのだ。
そういいながらも手では雑草をひょいひょいと抜いていく。
そう、無農薬で作物を育てるということは、そんな手間暇の日々の連続なのだ。
「このままでは自分も農家も崩壊する。なんとかしたい」。
若き日の小林さんの強い想いのみで始まった同社。
取引先の見込みはゼロ。中古のプレハブから始まった青年たちの夢は、今、着実にようやくの実りの季を迎えている。