厳しい自然環境だからこそ生み出せる、極上の酒を求めて

「この高畠の地の自然は厳しい。だからこそ、うまい水と米ができる」。
天明8年(1788年)より、この地で酒を造り続ける「後藤酒造店」の8代目・後藤佑吉さんは、厳しい口調でそう話し、「でも、それがおいしいお酒の元になるんだから、しょうがない」と、くしゃりと笑った。
山形県南部に位置する高畠町は、春の草木の息吹にはじまり、夏は日本有数の熱さ、さらに豊穣の秋を経て、大雪の冬を迎える。
自然の厳しさをたっぷりと味わう代償と言ってはなんだが、この地の水や米は自然の恩恵をたっぷりと受けている。
最上川の伏流水である水は柔らかくまろやかで、米は丸々と実をつけ味が強い。
それらこの地で採れる“水”と“米”を使い醸される極上の酒が、辯天シリーズだ。

手造り少量生産にこだわり、昔ながらの造りを頑なに守る老舗酒蔵

全国新酒品評会での金賞常連の大吟醸原酒は言わずもがな、この地だからこそ生み出せる酒を目指し、一貫して品質本位を目指した酒は、いつの時代も手造り少量生産にこだわってきた。
現在、人気の辯天シリーズは、あえて米の磨き具合や造り方を揃えることで、米の違いのみで味の違いを楽しませるなど、意欲的。
日本酒ファンは、そんな蔵の姿勢も支持しているのだ。
さらに昔ながらの造りを守る一方で、麹室はステンレス製にするなど、いいと思えば近代化もいとわず。
まだ市販はされていないが、米を8割以上磨きあげた究極の一杯も模索中。
常に未来を向いた姿勢こそ、老舗の老舗たる所以。
長く続くには、愛される付ける訳があるのだ。

世界が認める味わいも、さらなる歩みを続け進化を目指す

「山形県人には、キレの良さが大切。甘いのに辛いのが好きというか、すっきりと味わえる酒が好まれるんです」。
後藤さんはそう話し、馥郁たる香りを放つ吟醸酒をテイスティングする。
「お酒本来の旨みがあり、味はしっかりあるのに、飲みやすい。そんな酒を造れればいいですね」と笑うのだ。
世界最大級のワインコンテスト「インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)」の日本酒カテゴリーの純米吟醸酒・純米大吟醸酒部門でゴールドメダルを獲得した辯天 純米大吟醸原酒 「備前雄町・夢錦」など、目指すべき酒はすでに完成しているようにも思えるが、そうではないと笑うのだ。
「1年1年、毎年、お米によって酒は変わる。だから面白いんですよ」。
そう、今年もまた、大雪の到来とともに、後藤さんの新たなる挑戦ははじまる。