「馬力をつける」という言葉の語源は、馬肉を食べることにあるという。
なんといっても牛肉や豚肉に比べて高たんぱく、低カロリー、低脂肪。しかも鉄分が豊富なのだから、最近特に人気が高い理由もわかろうというものだ。
馬刺しはまず、あの艶めかしい色がいい。たまらなく食欲をそそる。そして脂の甘みが酒を誘い、噛むほどに滋味が脳を刺激する。永遠に噛んでいたいくらいだ。付属のタレは、九州地方で広く用いられている甘口醤油がベース。個人的には刺し身などには全く合わないと思うのだけれど、これが馬肉には絶妙に合う! 面白いことに、この甘みと呼応するのが赤ワインだ。特にシラーのような濃厚な品種がいいだろう。シンプルに塩を少しつけて食べるのもおすすめだ。肉本来の旨味がぐっと感じられて、こちらは日本酒が欲しくなる。
一方のたたきは塩、ニンニク、こしょうというテッパン調味料がすり込んであるので、もうそのままで完成品。外側に火を通しているため、食感の変化も楽しめる。大葉を巻いたり、檸檬をたらすと肉の旨味の後に口中が爽やかになり、後味がいい。これはビールやハイボール、スパークリングワインなどの発泡系のアルコールがいいかもしれない。
馬肉は存在感があるのに、どの食材や酒とも調和するので、組み合わせは自在だ。さらに胃に負担が少ないので食後感も素晴らしい。だからつい、いろんな野菜を試したり、飲み物を試したりして、やいのやいのと食卓の会話も弾む。とはいえ、普通にスーパーで買えるものでもないので、ぜひこの機会に純熊本産の美味を実感して欲しい。