「あれ?この道あってるよね?」宮崎県綾町の本庄川の畔。カーナビの案内は間違いなくその場所を示していた。私道のような小路の脇にポツリと佇む家屋と小屋。取材班は、疑念を抱きつつ車を降りれば「取材の方ですよね。ようこそ」と奥から声がかかった。ニッコリと笑って出迎えてくれたのは、『クッチーナ・リナルド』の店主リナルドさん。そう、「オンワード・マルシェ」の取材班が目指していた生産者のひとりだ。
イタリア・トスカーナ州出身のリナルドさんは奥様との結婚を機に、有機農業の故郷・綾町の豊かさ、美しさに触れ移住。ここで取れる野菜などを使い、イタリアの家庭の味を無添加で手作り。その美味しさをここ綾町から発信している。その製造場となるのが、自宅の脇に構えた小屋なのである。「野菜の皮むきから調理、瓶詰めまで、すべてをここで作業します」おしゃれに瓶詰めされたソースやパテがこんな場所で作られていることに取材班はただただ驚いた。大分県宇佐市にある『HappyFarm』も市街地から離れた田園地帯のど真ん中にある。ここも自宅に増設した小さな工房で、地元と九州産の果物や野菜を使った、こだわりのジャムを作っている。
「果肉感を大切にしたいから、手作業で優しくかき混ぜないとだめなんです」。そういって掬ってくれたジャムの味は、まさに果物そのままの美味しさを凝縮していた。八丈島にある『八丈興発』は島内最大の焼酎蔵にして、従業員はわずか人。島焼酎ならではの麦麹を使った焼酎造りにこだわるだけでなく、従業員全員で手貼りするラベルにまでその思いを込めた。取材を通して痛感した。作り手に必要なのはハードではない。ただ実直に美味しいを届けようとする作り手のハートこそ大切なのである。